■◇ ましろ ◇■
「殺してしまう意味が分からない」
危険性を排除するという意味では正しいのかもしれない。
彼女を殺したのはその甘さなのかもしれないと思わないでもない。
それでも。
「どうして、殺したの?」
止めを刺すように二発。
キラも銃を構えた。それは次の危険を回避するためだ。
殺すためじゃない。
「時々、アスランが分からないよ」
ミーアという名の少女を殺した人間が憎いのは分かる。遣る瀬無いのは分かる。
アスランは一番死んでしまった彼女と関わりが深かったから。
懐いてくる人間を邪険に出来る人間でもないアスランのことだからきっと、とても、とても、悔しかったし憎んだに違いない。
ほとんど関わりのないキラでも一瞬の間によぎった感情だ。
むしろラクスを汚す存在として彼女は嫌いだった。
それでも悲しい。
――――それでも憎い。
分かるけれどついて回る疑問。
どうして、殺したの?
どうして、殺すの?
人を。
ドウシテ彼女ハ死ンダノ?
平坦な顔をして非難の言葉を吐いたキラの首に指を伸ばす。
「時々、お前も殺してしまいたくなる……」
綺麗ごとばかり。
自分だけが綺麗で居る。汚れごとは全て自分が負う。
そうしてきたのはアスラン自身だ。
綺麗で、綺麗で、あるように。
一度穢れたくらいではその無垢さは穢れない。
その手が血に塗れても、綺麗に綺麗に洗い流す。
側に居る限りそうしていた。
望み通り銃を構えても撃てないキラは綺麗なまま。
だから殺すよ。
君が殺せない分。
君に殺させない分。
いくらだって殺してやる。
この指先に今は力を込められないけれど。
*日記から再録。
分かっているけど分かりたくない。殺さずを目指すために混乱のキラと、可愛さあまって憎さ百倍のアスランでした。