その内心がどうであっても麗しいその顔に曇りは無かった。

WOMAN

さあこっちは終わりとばかりにラクスはアスランの腕からキラを救い出し、その涙を浮かべた瞳を見て問いかける。

「キラ様。」
「ラクス……」
「分かれ道、ですわ。」

決然と少女は少年に言葉で示す。

「プラントへ行くか、このままアークエンジェルに留まるか。」

「ちょっ……ラクス!?」
「何を言っているんですか!?」

カガリとアスランの抗議は思いっきり無視して、ラクスはただただキラと向き合う。

「でも……そんなの……だって僕はストライクに乗ってるんだよ?」

たくさん人も殺して、たくさん裏切ったといわれて。
なのにプラントへ行けるわけがない。
だが、ラクスはふんわりとその懸念を振り切る。

「キラ様は私を帰してくださいました。だから今度は私が道を作りましたの。」
「道?」
「ええ。キラ様が選ぶことのできる二本の道ですわ。」

一つはそのままアークエンジェルに残ること。
もう一つは。

「私はプラントであなたを庇護することができます。」

クラインの名はそれができうるだけの権力を有する。
一人の人間の存在など隠蔽も簡単にすることが出来るし、オーブに籍のある彼だ。情報操作も簡単だ。

「そんなの俺は許さないぞ。」
「アスランの意見は聞いていませんわ。」

怒りを呈した婚約者の一言はやっぱり一言で切って捨てられる。


「キラ様。如何いたしますか?」

ふんわりにっこりアスランその他を威嚇しつつ、されどどこかしら真剣に。
問う少女に戦争という流れに巻き込まれて流され続けた少年は自分自身の選択を迫られた。

















艦を更に地上艦に乗せられた宇宙艦の中。
少年たちは傷心のアスランに引っ張られるようにして地上で足つきを追うためにブラジタルにクルーゼが手配した母艦を受け取りに行って此処にはいない。プラントに戻るのは、本国で用のあるクルーゼと家に帰るよう説得されたはずのラクスだけだ。

「良かったのですか?」
「あら。今は連れて行かないというだけですわ。」

将来的に誰が誰のもので、何がどうなっているかなどわからない。
笑んだ彼女はそう言って。

「なかなかの役者ですな。」
「あら。なんの事ですの?」

そうして天然ボケを装った最強のお姫様にクルーゼはやれやれと首を振った。
とりあえず、ザラ議長への報告は捗々しいことをいえそうに無い。








「今回の収穫は?」
「アスランの女装写真とキラ様のツーショットですわ。」

ピンクちゃんと呼び、常に連れ歩くハロから抜き出したメモリーを見せながら彼女は答える。
取引現場らしく落とした明かりの元、桃色の髪が揺れた。

「確かに。これで手を打ちましょう。」
「では現在製作中の新造艦……たしかエターナルでしたか?」
「ええ。『永遠』を約束する名で間違いありません。」
「それはどうでも良いのですが、お約束通りピンクにしてくださいませね。」
「ピンクとはいやはや派手な…いやいや趣味が悪い…」

ワザとなのか天然なのか口走る言葉はラクスの機嫌を損ねるものばかりだ。
故にほめ言葉一つ話せない、ザラ国防長官に向けて歴戦の兵―――クルーゼでも引きつる笑みを浮かべた少女は言った。

「クルーゼ隊長のヴェサリウスたちよりまともだと思いますわ。」





遠い遠い空の下、裏で糸を引くのが彼女だということは幸いなことに少年少女たちは知らなかった。

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一番はっちゃけたのはラクス様だと思います(笑)アスラン暴走は少なかったなぁ?
お付き合い有難うございました!