マリオネットの踊る庭
機械が唸りを上げていた。 いくつものコンピューターに繋がれた大掛かりな装置。 そして中央に設置されたカプセルの中で人影が横になっている。 「経過はどうだね?」 「順調です。」 仕立てのいい服を着た、あきらかに科学者ではなさそうな男に問われた作業員が答える。 「あとどのくらいで完成する?」 「なかなか素直なので、もう1,2時間で全ての課程が終わるかと。」 「……そうか。」 穏やかな笑みに獰猛な光を宿してそれを見つめる。 完成すれば始まる。 やっと始められる。 箱庭計画。 プラントを箱庭に―――唯一の楽園に仕立て上げるためのシナリオ。 まったく良くこんなにも都合のいいものを見つけられた。 シナリオを踊るマリオネットに適した人材。 すでにあるものから作るにはそれなりに元が良くなくてはいけない。 一度生まれ出てしまえばその固体が持つ能力を変えることは出来ないからだ。 もともとの才能。 今まで培われてきた脳内の情報。 それも全て残して人格のみを消去【デリート】して作り上げるマリオネット。 優秀なものは血統までいいときて、なかなかあきらめていたのだが…… 今はまだ評議委員を敵に回すわけにはいかない。 優秀な頭脳。 MS戦、白兵戦共に素晴らしい能力。 見目麗しい容姿。 飛びぬけていいのはアスラン・ザラだ。 けれどマリオネットにするにはいささか容姿が問題になる。 奇麗ではあるが、それはあまりにも鮮烈過ぎる。 それはイザーク・ジュールも然り。 ディアッカ・エルスマンには少年というよりは青年といった容貌でそれは既に軍人であっておかしくはない。 そうして白羽の矢が立ったのはニコル・アマルフィー。 儚さはないが、可愛らしさや幼さがありマスコットとしては十分になる。 けれど問題は彼の両親にあった。 たった一人の息子を猫可愛がりしている彼らには「戦争を終わらせるため」と言っても、「我々が勝つために!」と言っても効果はない。 戦闘能力を諦めてラクス・クラインという選択もあったのだが…… 「―――様。第一形態のAからKまで段階全て終わりました。」 「出してくれ。」 いたのだ。ここに。 彼らよりもずっと優秀で、美しい人形が。 「お目覚めかなキラ。」 現れるのは細い肢体に病院で出されるぞろりとした白い服。 ブラウンの髪がふわりと揺れて。 「ハイ。マスター。」 開かれたのはアメジストのような透き通った紫の瞳。 声変わり前のまだ高い少年の声が答えた。 その出来に、笑む。 彼は完成だ。 私の可愛い人形【マリオネット】。 |