マリオネットの踊る庭
微笑みながら放たれたその言葉を残して出て行った少年を追いかける。 何も反応がなかった。 視線が確かに合ったのに。 同じようにふんわりと微笑んだまま。 スルーされる視線。 それは無視に近い。 追いかけた。 あれはキラだ。 キラなのに…… ……どうして? 見えた小さな白い軍服を纏った少年を呼ぶ。 「キラっ!」 呼ばれて振り向いた少年はきょとんとして小首をかしげる。 「君は……アスラン・ザラ?」 それは存在を知っているというよりは、資料か何かで知っている程度のそんな認識。 知っているのは無理もないというよりあたりまえだ。 仮にも上官クラスの軍服に身を包んでいるのだからたとえ戦闘には参加しないお飾りだとしても資料くらいは行っているに違いない。 「どうか……」 したの?と続けられるはずの問いかけを無視するように叫ぶ。 「お前はキラなんだろう?キラ・ヤマトなんだろう!?」 「うん。」 当たり前のように頷く少年。 なのに。 ならばどうして? どうして俺を知らない? 「何をふざけてるんだ!」 「ふざけてなんかないよ。」 本気でわからない、と言った顔で。 困ったように見上げてくる紫の瞳が……被る。 3年も前の思い出に。 「なんで……同じ顔をするくせに……同じ名前で……」 ナゼそんなことを言うの? 困ったように苦笑してから、柔らかい声で「彼」は言うのだ。 「君が何を知っているか知らないけど、私はキラ・ヤマト。」 透明で。 儚くて。 それでもそれだけは確かなことだと。 「私は確かにその存在だよ。」 泣きそうな顔で追いすがってきた少年を返して与えられた部屋に辿り着くと、ほとんど何もないその部屋のベットに腰掛ける。 アスラン・ザラ。 名前は知っている。 彼だけでなく、あそこにいた赤をきた4人の少年たちは全てデータにあった。 けれど。 まさか「キラ」を知ってる人がいるなんて…… ふう、と自分の体を見下ろす。 当然ながら鏡なんてないから顔は見えない。 動く手足。 温もりある体。 それは人形ではありえない。 無機物なんかじゃなくて生物のぬくもり。 それでも…… 私は人形【マリオネット】。 |