「キラ……キラ・ヤマト!」

<アスラン?アスラン・ザラ!?>

聞こえた声に涙声が混じっているように聞こえたのはきっと気のせいじゃない。




BOY'S BEAT





再び降り立ったヘリオポリス。
ミゲルが機体を失っただけに留まらず、クルーゼ隊長まで被弾という事実に予感は深まっていた。
案の定、というか。
答えた声は懐かしいもので。

ため息をつく。

優しい、優しいキラ。
あいつに戦争なんてできっこない。

偶然か、運命の悪戯か。

まったくどうしてくれようか、と思ってみたところでこの状況は変わらない。
今やらなければならないのは偶然を憎むことじゃなくてキラを捕獲することだ。

危なっかしくてしかたがない。

マシュー機に続きオロール機の被弾でミゲルとやり合おうとしていたストライクに同装甲を持ったイージスを駆り、ストライクの持つ長剣を叩き落として良くやったとばかりにミゲルがストライクに向けて放った砲弾を撃破した。

<アスラン!?>

まさか仲間に邪魔されるとは思わなかっただろう
―――あたりまえだ―――ミゲルの抗議に涼しい声で応じた。
もともとそのつもりだったのだ。
いまさら躊躇うつもりはない。

「この機体捕獲する。」

<命令無視して出てきたくせに勝手なことを……>

「相手は軍人じゃない。」

<ちょっと待て!どういうことだ?>

「後で説明する。」

<あとでじゃなくて今しろって!>

ギャースギャースと喚く同僚にまじめな顔で仕方ないととどめの言葉。
かまってる余裕なんてない。

「ミゲル……頼む。」

譲れないから。
このまま残していったらどうなるか目に見えているから。

<あ〜わかった。分かった。手伝いはする。あとは自分でなんとかしろよ。>

もちろんクルーゼ隊長への報告も。
その意味をもちろんちゃんと聞き取った。

気は進まないが、もともとそのつもりではあったのだから本当に今更だ。

その前になんでこんなことになったのかしっかりきっぱり聞いておかなくちゃな。

キラにはそれをしっかりと決意し。
かなり予想できそうな真実が転がってきそうだが、これはその際問題じゃない。

「感謝する。」

ミゲルに一言それだけ返して。
イージスはストライクへと飛び出した。


来られないのなら連れてきてあげる。



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