<アスランっ!?>
悪いけど。
守るためならキラの意思も関係ないんだ。
BOY'S BEAT
イージスの鉤爪がかっちりとストライクを捕らえる。
いくらキラが優秀でも、機体が良くてもその性格に難があってはどうしようもない。
攻撃なんて出来るわけがないのだ。
優しいから。
泣き虫で、甘ったれで。
戦争なんて絶対にできないタイプだ。キラは。
撃破されないようにフォローをしなくていいぶん簡単。
身動きの取れないストライクからキラのあせったような声がする。
<アスラン!?何を……>
「キラは民間人なんだろう?ザフトで保護しても問題ない。」
<問題ないわけないだろ!これは地球軍のモビルスーツだよ!?>
「お前が乗ってるほうに問題があるんだ!」
子供のけんかのような言い合いの中、いちおう足つきにカモフラージュするために戦闘をしているようにビームサーベルだけ抜き合せるところは抜かりない。
ミゲルたちは足つきと戦闘中でさっきからひっきりなしに足つきから放たれたミサイルがシャフトに当たって軋みを上げている。
モビルスーツと違って戦艦は小回りが効かないのだからしかたない、というべきか。
無駄な足掻きでコロニー一つを破壊するほど愚かだというべきか。
そうして幾度となく当たったミサイルについにシャフトが崩れ始めた。
<ヘリオポリスが……>
呆然とキラは呟いた。
アスランとてヘリオポリスを壊すことは目的じゃなかった。
それでも出撃を命じられたミゲルたちのジンにD装備を言い渡されたのを知っていたからそう衝撃でもないはずなのに。
それでもユニウスセブンを思い出してか痛ましげに顔がゆがめられる。
それは一瞬の油断。
呆然としたキラはストライクの操縦を停止することになり、アスランも思わず手を止めた瞬間に乱気流に引きずられる。
「キラっ!?」
叫んでも遅い。
既にストライクは宇宙に放り出され、イージスもまた逆方向に飲まれる。
「くそっ……キラっ」
呼びかけても答えはない。
さっきはあんなに良く聞こえたのに。
<アスラン!捕獲するならちゃんとしとけ!こっちとんできたぞ。>
「ミゲル……」
飛び込んできたミゲルの通信。
安堵にため息が漏れる。
「ジンの損傷は?」
<バーニアが使い物にならない。自力で帰るのはむりだな。>
「現在地は?」
<今送る。>
操作しながらミゲルの愚痴が聞こえてくる。
<あれのどこが民間人なんだよ。>
「民間人だよ。ナチュラルじゃないが。」
<ってコーディネイターか!?>
「ああ。そうだ。」
送られてきた情報に自分がいる位置とはヘリオポリスがあった位置をはさんで逆方向にある。
今そこを通り抜けるのは危険というよりむしろ無謀だ。
(仕方がない……)
「ミゲル。ストライクに移れ。こっちから行くよりそのほうが早い。」
<おい>
本当は俺だってキラを人任せにしたくなんてないけれど。
「通信が通じないんだ。」
<……なんで通信が通じるんだよ>
「イージスはもともとストライクと同型だ。周波数を合わせれば問題ない。」
そういえば死んでしまったアスランと同室だった同僚がアスランを「メカオタク」と称してげっそりしていたことを思い出してミゲルが納得したことはアスランの知るところではない。
<確証は?>
「意識を失っているかどうかはわからないが戦意はない。絶対に。」
呆然としたままか。
もしかしたら泣いているかもしれない。
キラはそのほうがいいけれど。
泣けるならまだ大丈夫だから。
<わかったよ。了解した。>
ミゲルがストライクに乗り移ったのを確認して、白と赤の2機のGはヴェサリウスへと帰還するのだった。
おかしい……一体全体なんだってアスランがこんなのに?書きたいのはキラ狂じゃないお兄さんだったのに!
っていうかメインはミゲルの予定です。ミゲキラ?う〜んでもアスキラになるんだろうなぁ……(遠い目)
っということで視点変えて進みます。
予告。
ストライクから聞こえた奇妙な声。警戒しながらもストライクのコックピットに滑り込むミゲル。
そこにいたのは涙を流す少年だった。
はたしてその涙の意味は……
次章!「泣き顔の少年」
アスランの愛のため駆け抜けろガンダム!
……ちょっとした遊び心です。副題はありません。笑ってやってくださいな。